アンラッキーなあたし
残業手当なんかつかないのに、あたしは他人のために残業している。

情けない。

恵梨菜が残した仕事は思ったよりも量が多く、みんなどんどん帰って行った。そして、気がつけばオフィスにはあたししか残っていなかった。

チャ、チャンス!

誰もいなくなったのを見計らって、あたしは給湯室に忍び込む。持参したスーパーの袋に砂糖やコーヒーやミルクや紅茶をどんどんつめこんだ。

「ふんふんふーん」

思わず、鼻歌がこぼれた。人のいなくなったオフィスは宝の山。あたしはこうして会社の備品を時々失敬していた。残業手当ももらえないんだから、これくらい頂かないとやってられない。

ついでにトイレットペーパーも貰っていこうと、勢いよくスキップしながら給湯室を出ると、どかっと誰かにぶつかり、持っていた袋の中身が飛び散った。

「いってぇ」

しりもちをつく男を目の前に、あたしの顔からはさーっと血の気が失せた。

千葉よ、あんた、いつからそこにいたんだい?
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