アンラッキーなあたし
「お疲れ様でした」

帰り際、そう声をかけると、パソコンとにらめっこしながらも「お疲れ」と千葉は返してくれた。

備品をぱくっているのは確実にばれただろう。千葉はこのことを誰かに言うだろうか?

帰り道、あたしはそのことばかり考えていた。そろそろ契約の切れる時期。ここを切られたら生活は厳しい。いやな会社だけど、しがみつかなければ生きてはいけないこの現状が切なかった。

あ、トイレットペーパーも持ってくるの忘れた。

そんなことを考えながら、かかとのすりへったパンプスで歩いていると、目の前からやってきた二人組みの男に「きも!」「すげぇ、ブス」とすれ違いざまに言われた。

あたしは怒りも傷つきもしない。

こんなことはすっかり慣れっこだった。
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