アンラッキーなあたし
しばらくの間、あたしはそこから動くことができなかった。

熱はあがり、目まい、息切れ、動悸がし、なのに幸せすぎで恐かった。

感無量である。もう一生中田さんについていこうと決めた。あたしは浮かれていた。今なら肩甲骨で空が飛べそうな気さえする。

千鳥足でデスクに戻ると、恵梨菜が仕事を押し付けようとあたしを待ち構えていた。

「今日ね、大切な約束があるの。だから、これ、手分けして頑張りましょう」

うふっと上目遣いに書類を押し付けようとするのを、あたしは、えいと、押し戻した。

「自分の仕事は自分でやってちょうだい」

初めてあたしが強く断ったので、恵梨菜は目を丸くしている。

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