携帯小説～誰かのための予言～
無理もない。

どこの誰だかもしらない少女が突然やってきて線香をあげたいだなんて、不審がられても仕方ない。

とはいえ、そのまま帰る気にもならず、私は丘の上から中学校を見下ろしていた。

ここからの眺めはすばらしくよかった。

しかし、トモがどんな気持ちで中学校を見つめていたかと考えたら、胸が苦しくなった。


すると、坂の下から誰かがこちらに向かって上がってくるのが見えた。

ブレザースーツの制服の胸元に「山木」というネームプレートが見える。

トモの姉妹に違いない。

私はわらにもすがる思いでその少女に駆け寄った。

そしてトモの母親に感づかれないよう、家には背中をむけた。

「あの、すみません。私菅野ハナといいます」

少女は、突然現れた私に対して露骨に嫌な顔をした。

「お願いします。山木トモさんのこと教えてください」

という私に対して、顔をそむけ、向こうへ行けと言う仕草をしてみせる。
< 158 / 204 >
表紙・目次

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop