携帯小説~誰かのための予言~
死んでしまっても妹をかばうトモが不憫だった。

その気持ちが妹に届いていないのも哀れで、胸が痛んだ。

「じゃあ、『誰かのための予言』はミサさんの頭の中の世界なの?」

「私も最初はそう思っていた。被害者が私だけなら、まだ我慢できるって。でも…」

「違うの?」

「『誰かのための予言』は一人歩きしてしまった。ミサの手を離れて。そして死んだアユミの頭の中にリンクした」

「アユミさん…」

「アユミも被害者だった。だから本当は彼女を消したくはなかったの。でも、もう彼女を消す以外に方法がなくて」

トモの声が途切れ途切れになる。

「でも予言なんでしょ? プラスの予言をしたらいいじゃない。みんなが幸せになれるような」

今までの予言はすべてネガティブなものばかりだった。

ポジティブなものにすれば…。

「私もそう考えたわ。だから何度もやってみたの。でも、その予言は実現しなくて…」

トモの声がさらに弱弱しくなる。

「あの予言は憎しみ、ひがみ、恨みという人の心の中の弱さ、醜さから生まれたの。だから、プラスの予言は不可能なの。人を不幸にする予言しか成立しない」





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