丹後の国のすばる星
 あずみは島子の胸に抱かれ、涙で島子の服を濡らし朝を迎えていた。
「あずみ、泣いてたね。悲しい夢でも見た」
「うん、悲しい夢だったよ」
 目頭を服の袖で拭う。
「ずっとうなされていたようやけど。どんな夢やったん」
「亀比売さまが」
 島子はあずみの顔を覗き込んだ。
「なんでもない。きょう、出かけてきていいかな」
「どこいくの」
「船着場のあたりとかよ、たまには散歩もいいかなって」
 島子は漁へ行く準備をするため、あずみは島子よりも少し早めに家を出た。
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