月夜の桜
穏やかな鳥の囀(サエズ)りと共に、初春の冷たい風が頬を撫でる。
桜は瞼を震わせ眉を潜めると、掛け布を引っ張り上げて寝返りをうった。
彼女は朝が大の苦手だ。
邸にまだ女房や兄がいたときは無理やり起こされていたのだが、一人になった今は咎められることもなく基本何があっても昼まで目を覚まさないのだが、今日は違った。
掛け布に潜った状態で桜はうっすらと目を開けると小首をかしげる。
(どうして風が入ってきているのかしら?)
昨夜、蔀を閉め忘れて眠ってしまったのだろうか。
一瞬そんな考えが頭を過ぎったが、未だだるさの残る頭を緩慢に振った。
そんなはずはない。
昨夜、春といっても朝は冷えるからと確かに蔀を下げたはず。
下げた記憶もきちんと残っている。
ならば、あの風はどこから入ってきたのだろうと微睡みの中で考えていると不意に掛け布がめくられた。
突然入ってきた明かりは目を閉じていてもなお眩しく、目をきつくとじる。
桜ただ一人で住んでいるこの邸で、掛け布がめくられるというのは有り得ない。
通常の彼女なら訝しんだだろうが、あいにく彼女は寝起きである。
まともに機能しない頭は、何故かそれをいつものことだと認識し、再び眠ろうと微睡みに身を任せると、聞こえるはずのない声が聞こえて飛び起きた。
「おはようございます。姫」
桜は瞼を震わせ眉を潜めると、掛け布を引っ張り上げて寝返りをうった。
彼女は朝が大の苦手だ。
邸にまだ女房や兄がいたときは無理やり起こされていたのだが、一人になった今は咎められることもなく基本何があっても昼まで目を覚まさないのだが、今日は違った。
掛け布に潜った状態で桜はうっすらと目を開けると小首をかしげる。
(どうして風が入ってきているのかしら?)
昨夜、蔀を閉め忘れて眠ってしまったのだろうか。
一瞬そんな考えが頭を過ぎったが、未だだるさの残る頭を緩慢に振った。
そんなはずはない。
昨夜、春といっても朝は冷えるからと確かに蔀を下げたはず。
下げた記憶もきちんと残っている。
ならば、あの風はどこから入ってきたのだろうと微睡みの中で考えていると不意に掛け布がめくられた。
突然入ってきた明かりは目を閉じていてもなお眩しく、目をきつくとじる。
桜ただ一人で住んでいるこの邸で、掛け布がめくられるというのは有り得ない。
通常の彼女なら訝しんだだろうが、あいにく彼女は寝起きである。
まともに機能しない頭は、何故かそれをいつものことだと認識し、再び眠ろうと微睡みに身を任せると、聞こえるはずのない声が聞こえて飛び起きた。
「おはようございます。姫」