月夜の桜
とても信じがたい言葉に、桜は否定的な言葉を何度も何度も繰り返す。



きっと彼は人違いをしているのだろう。



でもなければ、呪われた彼女を姫などと呼ぶはずがないのだ。



無理やり導きだした答えに頷くと、彼は憂いを含めた表情で僅かに瞳を伏せる。



顔の造作が整っているためか、滲みでる色香に思わず息をつめた。





「確かにあなたは人と人との間に生まれた子。本来ならば、地上に生まれ出(イ)でることのなかった命……」

「どういう……」




こと、と最後まで呟く前に強引に――けれど丁寧に抱きすくめられ桜は驚きで目を見開く。



――桜の背にまわされた手は、小刻みに震えていた。



威月は深く息をつくと、微かに震える声で更に強く桜を抱きしめる。





「お辛かったでしょう。人々に陰口をたたかれる日々は」

「――っ」





幼き頃の思い出したくもない思い出がよみがえる。



呪われし姫と陰口をたたかれ、忌み嫌われる日々は言い表しがたいほどに辛く苦しいものだった。



何度となく死を望み、何度となく神を怨んだ。




























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