月夜の桜
勢いよく顔を背け、桜はぎゅっと瞼を閉じた。
心臓が今までにないほどに早く鼓動を刻む。
頬も驚くほど熱をもち、何もかもが初めてで頭の中で色んな情報が飛び交い何が何だが分からない。
かなり混乱している彼女は、手首の熱が離れると共に熱っぽい吐息を吐きだし瞳を開ける。
彼女の琥珀の瞳に映った威月は、驚いたように目を見開く彼に小首をかしげて見せた。
「威月様……?」
「あ、も、申し訳ございません。姫があまりにお美しいのでつい……」
ぱっと背けられた彼の顔が、一瞬赤く見えたのは気のせいだろうか。
戸惑ったように袂で口元を押さえた彼は、忙しなく視線を右往左往させて決してこちらを見ようとしない。
突然の変化に目を瞬かせると、威月は一つ深く息をついて突然その場に座り込んだ。
驚いた彼女は、目を見開くと慌てて彼の元まで走るとその場に座り込む。
「大丈夫ですか!? どこか御気分でも……」
「いいえ。何でもございません。ご心配させてしまってすいません」
穏やかに微笑む彼は、とても美しかった。
あまりの美しさに僅かな羨望を抱きつつ、微笑んで首を横に振ると彼はさらに笑みを深くする。
そして、こちらに彼の手が伸ばされた時、不意に視界がぐにゃりと歪んだ。
「……え?」
目を見開く威月の表情がどんどん小さくなっていく。
自分の身体が背後に倒れているのだと理解した瞬間、彼女の意識は完全に閉ざされた。
心臓が今までにないほどに早く鼓動を刻む。
頬も驚くほど熱をもち、何もかもが初めてで頭の中で色んな情報が飛び交い何が何だが分からない。
かなり混乱している彼女は、手首の熱が離れると共に熱っぽい吐息を吐きだし瞳を開ける。
彼女の琥珀の瞳に映った威月は、驚いたように目を見開く彼に小首をかしげて見せた。
「威月様……?」
「あ、も、申し訳ございません。姫があまりにお美しいのでつい……」
ぱっと背けられた彼の顔が、一瞬赤く見えたのは気のせいだろうか。
戸惑ったように袂で口元を押さえた彼は、忙しなく視線を右往左往させて決してこちらを見ようとしない。
突然の変化に目を瞬かせると、威月は一つ深く息をついて突然その場に座り込んだ。
驚いた彼女は、目を見開くと慌てて彼の元まで走るとその場に座り込む。
「大丈夫ですか!? どこか御気分でも……」
「いいえ。何でもございません。ご心配させてしまってすいません」
穏やかに微笑む彼は、とても美しかった。
あまりの美しさに僅かな羨望を抱きつつ、微笑んで首を横に振ると彼はさらに笑みを深くする。
そして、こちらに彼の手が伸ばされた時、不意に視界がぐにゃりと歪んだ。
「……え?」
目を見開く威月の表情がどんどん小さくなっていく。
自分の身体が背後に倒れているのだと理解した瞬間、彼女の意識は完全に閉ざされた。