《爆劇落》✪『バランス✪彼のシャツが私の家に置かれた日』
ぎゅっと目を閉じて、顎をひいた私。
あれ、来ない。
キスされるかと思っていた。だけど、時間が少したっても三浦くんは何のアクションも起こして来なかった。
「真澄さん、大丈夫だって。嫌がることは、しないから」
嫌がる?
嫌がっているように、拒んでるように見えたんだろうか?
瞼をぎゅっと閉じたから?
自分の中で覚悟を決めただけのつもりだったのに。
「真澄さん、夜何が食べたい? 俺が作るよ。そうだ! 五目焼きそばにする?」
目をパチパチと瞬きさせて、可愛らしい年下の三浦くん。
言っとくけど私って、キスの了解の仕方もわからないほどの独身女だからね。
嫌なんかじゃないのに、嫌がって見えちゃうようなリアクション下手な女なんだよ。
わかるかなぁ。
恋愛から離れていた29歳の女の読みにくい反応。
「やわらかい麺にしてね」
素直に言えるのは、食べることに関したことだけのような気がした。