《爆劇落》✪『バランス✪彼のシャツが私の家に置かれた日』
急いで信号待ちの車に視線を走らせた。
このままじゃ、ひかれる!
こいつは、なんで命をかけてまでこんな馬鹿な真似をすんの!
全く信じられないほどの馬鹿野郎だ!
かなり、焦っていた。全ての車が私を目がけて走って来ようとしている風に思えてきた。
アイドリングストップ機能がついている車たちのエンジンを始動させる音が聞こえてくる。
言えばいいんでしょ! 言えば!
「好き!」
「え?」
聞こえなかったように耳の後ろに掌をあてる三浦くん。
「好き! お願いだから、動いて!」
真っ赤になって叫んだと同時に三浦くんの腕が私を小脇に抱えるようにして走り出した。
猛スピードだ。
こいつ、案外力持ちだったんだ。
感心しながら、横断歩道の上に足をつくことなくひたすら揺られていた。
無事に渡りきったことに心から安堵して、膝に手をつけ肩で息をしている三浦くんを見た。
信じられないくらいに、いかれてる!
いや、正真正銘のいかれ野郎だ。
まだ、肩で息をしながら三浦くんが、あきれまくっている私の方へ顔を向けた。