《爆劇落》✪『バランス✪彼のシャツが私の家に置かれた日』
ハンバーグの材料をボールでこねる間も、フライパンで焼いている時も真澄さんは隣でじいっと俺の手元を見ていた。
「あちっ!」
跳ねた油が当たったようで、手をさする彼女。
「真澄さん、早く冷やして!」
真澄さんの手を掴んで流水で冷やす。
火傷でもさせたら大変だ。
流水に手を当てながら、俺を見上げる真澄さん。
「ごめんね。なんか結局作らせちゃった」
「いいって。これからも真澄さんが食べたいものは、俺が作るからさ」
「じゃあ、食べたら後片付けは私がやるからね」
蛇口を上げて、水を止めるとシンクの脇に下げてあるタオルを取って、真澄さんの手を包むように拭いてあげる。
少し頬を薄いピンク色に染めて視線を下に向ける真澄さん。
こんな感じに恥ずかしいのを隠そうとする真澄さんの表情もまた可愛らしい。
腕を真澄さんの腰に回して、優しく抱き寄せる。心臓が笑えるくらいにバクバク踊り始めた。
熱くなりすぎた俺の体全部が、やがて一個の心臓になったようにドキドキし始めていた。