《爆劇落》✪『バランス✪彼のシャツが私の家に置かれた日』
今さっきまでアイドルのキャピキャピ声が聞こえていたのに気がつくとおっさんのだみ声にかわっていた。
どれぐらい長い間、抱きしめられていたんだろう。
優しいハグは、『好き』という三浦くんの気持ちが私の心まで染みてくるほどに伝わってきた。
不安な気持ちなんかにならないでって三浦くんが言ってくれているように感じた。
「また、ついちゃったよ。リップ」
不意に抱きしめられたせいで、また三浦くんのシャツに、性懲りも無くリップがついてしまった。
「好き」
三浦くんが、また言ってくれた。
「ん」
「真澄さんが好き」
「わかってる。何度も言うとありがたみが無くなるよ」
「へーありがたいんだ? 俺、何度も言いたいんだけど」
「なんで」
「……伝わってないかもしんないから」
真面目な顔で私を見つめる三浦くん。
あ、もしかして……。三浦くんは、さっき私がキスを避けたりしたから誤解してるのかも。
「……大丈夫。もう十分に伝わってるから」
「ほんとに?」
「ん、ほんと。あのさ、洗うから……脱いでよ」
三浦くんのシャツの胸元部分を少しつまんだ。
「やらしー、また脱がす気?」
そう言いながらも前に洗ったシャツは棚へ置いて、今来ているシャツのボタンを外しにかかる三浦くん。
「えっと、後ろ向いてるね。あ、そうだ。トレーナー出しとくよ」
「うん」
引き出しからトレーナーを出して、振り返ると三浦くんは、もうすっかり上半身裸だった。
見ないようにしながら三浦くんへトレーナーを差し出した。