《爆劇落》✪『バランス✪彼のシャツが私の家に置かれた日』
③中川真澄〜嘘とコンビニ〜
翌日、飲み過ぎてもいないのに頭痛がして、会社についてからは静かに座りこめかみを押さえていた。
「先輩! ずるいですよー。先輩だけお持ち帰りされちゃってーーーしかも、あんなイケメンに」
朝から万里はキーキーと子猿みたいに怒っていた。
「はーーー、そうですか。それはそれは……」
思い出したくもない男の影を頭から追い出そうと首を振ってみた。
ダメだ。イケメンのインパクトが強すぎる。三浦の顔は、性格が腐っていても悔しいことに確かにかっこ良かったのだ。
「で、いくとこまでいったんですかー?
あのイケメンと」
朝から凄いことを聞いてくるものだ。
最近の若者は、オブラートに包むという技を知らないらしい。オブラート自体が何たるかもきっと知らないと思う。
まあ、私も小学生の頃にまだ健在だった母方のおばあちゃんが薬を飲む時に丸い缶から薄いオブラートを出してくることがなければ、オブラートたるものを一生知らなかったかもしれない。
「いくとこまでねー」
いい加減な返事をしていると万里は驚き悲鳴みたいな声をあげた。