《爆劇落》✪『バランス✪彼のシャツが私の家に置かれた日』

帰ろうとしているのか立ち上がりコートに手をかけている彼女。

テーブルに置かれたままの彼女が使ったカレー皿を眺めた。

「あんたさー」

彼女の近くまで行き、彼女の細い両肩をがしっと掴んで前に立ちはだかる。

「あんた、それ食い逃げだろ」

「え?」
驚いて俺を見上げる彼女。彼女の丸い瞳がより丸くなって、それから一気に大きく見開かれた。


「あの……えっと、私はそういう安い女じゃないので」

安い女? 一体どういう意味だ?

彼女の言葉の意味が知りたくて、考えながら彼女の気持ちを知るするために彼女との距離を更に縮めた。

見れば彼女の瞳は、やっぱり真ん丸で、鼻も丸くて小さいし、口も小さい。

彼女のツヤのある唇がぎゅっと閉じられシワを刻む。

安い女?
あ〜なんか勘違いしてるのか?

おもしれー女だな。カレーを食わせた代わりに襲われるとでも思ってそうだな。

女ってそんな勘違いするもんなのか?

腹が減ってる女を手作りカレーで釣って、タダでカレーを食ったんだから見返りに次はお前を食わせろととでも言うと思ったのか?

そんなあくどいことをする狼男と思われたのかよ、俺って。

へぇ、それならそれで……おもしれーじゃん。



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