《爆劇落》✪『バランス✪彼のシャツが私の家に置かれた日』
「あっと、そういうのは困るというか」
しどろもどろになって頰がまた桜色に染まる彼女。
桜色だった頰が、見ているうちにどんどん真っ赤な椿色になりそうだ。
それに、掴んでいる彼女の肩が両手にやけに熱く感じてくる。彼女の体が熱を持っているのか、俺の手が熱くなっているのか判断がつかなくなっていた。
「あんた、ばかな想像すんのやめてくれる?」
「は?」
「俺は、食いっぱなしで帰る気なのかって言いたかったんだよ」
顎でテーブルの上にあるカレー皿を示した。
「ひょっとしてさ、へんな期待しちゃったんだ? あんた」
彼女の顔を覗き込み、にやついてみる。
余計に顔を真っ赤にした彼女。
慌てながら彼女の肩に置いていた俺の手を払い落とし、カレー皿に手を伸ばした。
「ば! 馬鹿な! 片付けますよ。洗えばいいんでしょ、洗えば」
真っ赤な顔してカレー皿とスプーンを持ちキッチンへむかう彼女を見ていたら、無性に笑いたくなってきた。
でも、きっと笑うと彼女がまた真っ赤になって怒り出しそうだ。だから、堪える為に手の甲で口の端を押さえた。
声は出さずに済んだが、肩が震えるのは止められなかった。