《爆劇落》✪『バランス✪彼のシャツが私の家に置かれた日』
彼女の部屋は、カントリー調? というのかなぁ、何しろ白い木製のもので統一されている部屋だった。

思ったより……女の子が好きそうな部屋だな。
なんとなく、笑いそうになってさりげなく、手の甲を口に当てた。

窓辺やテーブルに置かれた緑の観葉植物は、部屋の空気を浄化しているような気がしてなかなか良いと思えた。


2人掛けのダイニングキッチンにテーブルとイスがあった。
「座っててくれます? フラフラされてると嫌なんで。今すぐ珈琲は入れますから……もちろん、インスタントでもいいんですよね?」
歓迎されていないのか強い口調な気がした。

「いいよ。急がなくても」

「急いで飲ませて帰らせないと……」

「え?」

「いーえ! なんでも」

椅子に座り部屋の中を眺めた。 リビングにあるベージュのソファには、クマのぬいぐるみが3体座っている。

1体は茶色、もう1体は少しピンクでリボンが頭についている。カップルなんだろうか? いや、兄妹?

クマのぬいぐるみの横にまたクマのぬいぐるみ。ん? これは知ってる。黒いクマ。そう! くまモンだ。

へえ、クマとかのぬいぐるみが好きなんだ? でも、クマだったらなんでもいいのかよ。これも彼女のイメージと違ったな。
また密かに口を押さえた俺。

白い壁の真ん中には木製の棚があって
何かを入れるのかわからないが、 ガラス瓶が3個、空のまま飾っておいてある。

なんなんだよ、あれは飾りなのか? 空瓶を飾って何が面白いのか俺には良くわからない世界だ。

テーブルの上にマグカップが置かれた。
「どーぞ」

カップを見ると微妙に大きさが違うものの形もほぼ同じだし、彼女の手にしているものと色違いのカップのようだ。彼女のが淡いピンク色で、俺のが淡い水色。

「な、これってまさか前の男の使ってたカップだったりする?」

俺の前に座りカップを包み込むようにしていた彼女は、明らかにギクッとしていた。

「まさか、はははっ」
白々しい笑い方だ。

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