《爆劇落》✪『バランス✪彼のシャツが私の家に置かれた日』
「じゃ……そろそろ帰るかな」

「…」
俺を引き止める気が彼女には全然無いようだ。
それでも玄関までは見送りに来てくれた。靴を履いてから、もう一度部屋の中を眺める。

「なんかさ懐かしい感じするな。この家」

「は?」

「木の香りとかさ、素朴で、こうわざと洗練されてない感じがしてさ」

「洗練されてない?」
彼女の顔がピクッとしたみたいな気がした。

やばっ、またマズイこと口走ったか?

「っていうか、古くさい」

「え!」

「違うって、いい意味でだよ。古き良きものって感じで落ち着くんだよ」

「下手くそなフォローは、いりませんから」

確かにフォローになってないかもしれない。だが、俺は綺麗でオシャレな兄貴のタワーマンションより、こっちの方が好きだなぁといいたかったんだ。


「……早く帰れば?」
彼女は腕を組みムッとして仁王立ちをして俺を見ていた。

「…」

「じゃ」
いたたまれずにドアを開けて外へ出る。

俺って、なんでこう、ひと言多いんだろうなぁ。

首をかしげながら珍しく少し反省していた。
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