《爆劇落》✪『バランス✪彼のシャツが私の家に置かれた日』
どうにかコンビニのトイレで危機を脱し、レジ前にあるガムを買ってから店を出た。
やっぱり、近くて便利なのはコンビニだ。
まだ、お腹をゴロゴロいわしながらやっとの事で家に帰りついた。
健康って大切だ。本当、体さえ大丈夫なら、なんとかなることも体の調子が不調だとどうにもならない。ふいにやってくる自然現象ほど恐ろしいものはない。
ダイニングチェアに座り、大きく息を吐いてからテーブルに置いた雑貨屋さんの紙袋を見つめた。
そういえば、これ何かな?
妙に気になって三浦に渡された紙袋へ手を伸ばした。
中にはティッシュボックスより少し大きめの箱が入っていた。
なんだろ?
箱を開けると仕切りを真ん中にしてホワイトのマグカップが二つ入っていた。
シンプルで大きさも形も同じマグカップ。カップを上から覗くと、真ん中にすじが入っている。カップに入っていた小さなカードに『ハートが浮かぶマグカップ』と書いてあった。
あーこれ、もしかしてカップの中がハートの形なのかも。しかし、ハートって……。
試しにひとつのカップをゆすいで、冷蔵庫から取り出したフルーツジュースを注いでみる。
カップの中に見事なオレンジ色のハートが浮かんだ。
やだ、少女趣味じゃない? かわいいけどさ。
一体なんなのこれ。
私が元彼か使ってたマグカップを今でも置いてるからかわいそうに思ったの?
冗談じゃないわよ。まったく余計なお世話だっていうの。マグカップくらい欲しけりゃ働いてるし私だって買えますから!
ますます三浦の事が気に入らない、そう思った。
でも……
三浦が買ってくれたハートのマグカップに罪はない。
じゃ、マグカップは使わせてもらおうかな。
とりあえず、もうひとつのマグカップも一回洗おうとキッチンへ運んだ。
でも、なんで二つ? ひとつあれば十分なのによりによって、ペアカップなんて! なんて嫌みなの?
一緒に使う人なんかいやしないのに。