《爆劇落》✪『バランス✪彼のシャツが私の家に置かれた日』
「私相手に妙な気分ってあれでしょ? 言い換えると私に妙に胸がキュンとくるくらい惚れちゃったってことでしょう?」
三浦をやり込めてやるつもりだった。いつも三浦には、嫌な気分にさせられっぱなしだったから。
言葉でなら私だって負けてない。
見上げた三浦は、ひくほどに真っ赤になっていた。
え、まさかの究極のゆでダコ状態だ。なんでよ、こいつ。本当に変な男だ。
「え! どうしてそうなるんだよ! あ、あ! あんたに惚れたって? 誰が? 俺が!? 」
人差し指で自分を差す三浦。
「それは無いなら、なんで真っ赤になって妙な感じになるの?」
「それは……」
完璧に目が泳いでいる。逃げの答えをどこかに探しているようだ。
「それは?」
髪の毛をクシャッと指でいじる三浦。
「んーーー」
三浦が私をちらっと見て、ため息をついた。
「いろいろあんだよ。こっちにも準備が」
「準備? 準備なんて必要ないよ。準備しといたって必要な時には使えなかったりするもんなの。言いたいことあるなら、今言えば? また、文句?」
「違う」
「じゃあ……」
「頼むから俺のタイミングでいかせてくれよ」
「なんなの……タイミングって」
「とにかく……タイミングは、考えてるからさ」
そう言って三浦は自分の会社のビルの前に来たらしく「じゃあ、またな」とぎこちない仕草で左手をあげた。
カッコつけてはいたが、顔は真っ赤だし、いつもよりおかしい。何処かが妙だ。