《爆劇落》✪『バランス✪彼のシャツが私の家に置かれた日』
「先輩!」
後ろから走ってきた万里。


「おはよう。息切らして、どうしたの?」

「どうしたのじゃないですよ。先輩! 見てましたからね! なんであのイケメンと
朝から出勤してるんです?」


「あ、見てたの?」


「やっぱり付き合ってんですか? よく見るとカッコ良く無いとか言ってたくせに。お泊まりですか? 先輩のうち? それとも相手の?」
可愛らしい瞳を好奇心でキラキラさせている万里。

「あ〜、呼ばれて相手のマンションには行った」
呼ばれて行ったのは本当だ。ただ、小銭や殺虫剤を持って行ったことは、省いているが。

「え〜展開早い! どんなマンションです?」

「小杉のタワーマンション」

「すご〜い、お金もあるんですね! 分譲ですかね?」

「さあ、そこまでは……」

「2人で御飯作ったりとかもしちゃいました?」

「あ〜、向こうがカレー作ってくれてて……片付けは、私もしたかなぁ」
これも本当のことには違いない。カフェエプロンまでつけてもらった。

「イケメンでお金持ち、しかも料理好き。言うことないですねー。エッチが、たいしたことなくてもいいじゃないですか」

「え? あ、うん、そーね」
万里に同意したものの複雑な気分だ。

万里の中では、三浦という男はイケメンでお金持ちで料理好きだが、エッチは今ひとつの男になっている。

前に私がそんな感じに言ったからだ。

ま、いいか。誤解させておけば。

全部良かったら、なんだがシャクに触るしね。ひとつくらいダメなところがあってもいい。


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