《爆劇落》✪『バランス✪彼のシャツが私の家に置かれた日』
⑨中川真澄〜バナナの葉の形〜
仕事中は電話を取る時に自然と声が変わる。わざと少しばかり高いトーンで話している。
その方が若い感じだし、いい人そうだから。低い声がいい人じゃないって訳じゃない。ただ、怖そうではある。
「お待たせいたしました。総務課の中川です」
電話を回され出てみると
「え? あなた、中川さん?」低い男性の声がした。
「はい、中川です」
「中川真澄さん?」
まだ疑っている。しつこい奴だ。
「ええ、失礼ですがそちらは?」
「……へえ、仕事場では声違うんだ。いいじゃん。その声」
この声、話し方はまさか!
タメ口で横柄な態度がプンプンにおう。すごく嫌な予感がした。