冷たい手
 気がついたら、知らない部屋の布団の上。冷たい感触が喉を通り過ぎて、ゴクンと何かを飲み込んだ時に目覚めた。目の前には、近すぎる距離に強い眼差しの瞳。

 チュ……ッ

 音を立てて離れた唇に、ようやく自分の唇と目の前のそれが重なっていたと認識できた。けれど、体も脳も動かない。
 
 「熱、高い」

 そう言って額に翳されたのは、昨日から思い出して堪らない冷たい手。目を閉じて触れる心地よさに浸っていたら、その手がスルリと頬を滑って首筋を撫でた。
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