憧れ~大切な君へ~
207号室まで行くと母さんがトントンとノックをしてドアを開けた。

そこは殺風景な部屋で真ん中にベッドが1つあるだけだった。

その上に横たわる変わり果てた兄ちゃんの体には沢山の管が繋がれていた・・・
『兄ちゃん!!!』

俺は兄ちゃんのもとへ駆け寄った。

すると
そこへ先生が入って来た。

『先生…息子は…涼は助かるんですか???』
『今日1日待ってこのままの状態なら脳死と判断されます。』
『じゃあ…』
母さんは息の様な声を漏らした。
『覚悟しておいて下さい。』
先生はそう言って出て行った。

覚悟って何のだよ?

兄ちゃんが死んじまうって覚悟か?

そんなの必要ないに決まってんじゃん!

兄ちゃんは絶対に助かるんだよ!!!

助かるに決まってんだよ!!!

兄ちゃんみたいな良い人間が死ぬ訳ないだろ!!!

『ちょっとお父さんに電話してくるわね。』
そう言って母さんは病室を出て行った。

1人取り残された俺は兄ちゃんに話しかけた。
『なぁ兄ちゃん…生きろよ!生きてくれよ!信じてるから目を開けてくれよ!!!』

俺はいつの間にか眠っていた。

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