高のち飛車、ときどき猫
『よし、じゃあ取り敢えずリョウの所に連れて行こう。こいつらも寒がってるだろうしね』
男の方がまだ話の分かる奴かもしれない。
多分自分が寒いのだろうが、こちとら何時間も此所で凍えてるんだ。
このままじゃ女のポエムが生い立ちにまで遡りそうだったので、正直助かったといえよう。
『うん、きっとこの子達お腹も空いてるよ。家にミルクあったかなぁ?』
前言撤回。女の方も話が分かる奴だ。
元来牛の乳等、オレ等には栄養価が高くて受け付ける代物ではないが、元より現状は栄養失調だ。
背に腹は代えられない。というより迅速な高栄養補給が、現状では必須項目。
ただし人肌程度には温めとけよ?
猫の舌はデリケートなのだ。猫舌とかほざく人間もいるが、オレ等はそれらの比じゃない。
『もう大丈夫だぞお前達』
――こうしてオレ等は男の手により、ダンボールごと車の後座席に押し込まれ、一先ず九死に一生を得たという訳だ。