高のち飛車、ときどき猫
不意に揺れが収まり、エンジン音が途絶えた。
着いてしまったのだ。三途の河原、地獄の一丁目へと。
ここからではその獄土を伺い知る事が出来ない。
眼前に聳えるダンボールが、まるでプリズンアルカトラズだ。
「あら着いたみたいよ? 楽しみ〜」
それでも尚、此所が天国だと信じて疑わない兄弟の単純な思考回路が羨ましい。
なすがままされるがまま、逃げ場は何処にも無いというのに。
『さあ着いたぞお前達』
空間から顔を覗かせ、ダンボールの端を掴む男の表情が、まるで裁定を下す閻魔の笑みのようにも見える。
『すぐに連れて行ってやるからな』
連れていくだと?
いきなり最終地獄のコキュートスへとか?
死は受け入れてはいても、地獄は正直勘弁してほしい。
人間が持つ裏の笑みが、こうまで恐ろしいものだったとは。
オレの心音が悪い意味で高鳴る。