高のち飛車、ときどき猫

『ほら寒いだろ? 身体を暖めないとな』


閻魔な男が固まってるオレ達を、強制的にある場所へと移動させる。


途端に襲い掛かる灼熱の熱気。


その発生源は赤く、妖しげに揺らめいていた。


これぞ焦熱。正に煉獄の業火だ。


その篝火の中心部に触れるでもすると、オレ達の身体はおろか、魂までも未来永劫焼き尽くされる事になるだろう。


「わぁ……暖かいね」


「うん……ママが傍にいるみたい」


それは離れてるからそう感じるだけだ。


もっと危機感を持て。自分を見失うな。


『ほぉぉ、こまかくてむぞかのぉ』


突然鳴り響く掠れたダミ声に、兄弟達はおろかオレまで緊張で身体を震わせてしまった。


思いっきり訛ってんじゃねぇぇ!


祖父とは聞いてはいたが、見ると本当に棺桶に片足突っ込んでそうなしわくちゃだ。


末期の酒なのか、ワンカップ片手に笑みを浮かべる翁は、まるで冥府の渡し守カロンを彷彿とさせていた。
< 20 / 22 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop