高のち飛車、ときどき猫
『ほら寒いだろ? 身体を暖めないとな』
閻魔な男が固まってるオレ達を、強制的にある場所へと移動させる。
途端に襲い掛かる灼熱の熱気。
その発生源は赤く、妖しげに揺らめいていた。
これぞ焦熱。正に煉獄の業火だ。
その篝火の中心部に触れるでもすると、オレ達の身体はおろか、魂までも未来永劫焼き尽くされる事になるだろう。
「わぁ……暖かいね」
「うん……ママが傍にいるみたい」
それは離れてるからそう感じるだけだ。
もっと危機感を持て。自分を見失うな。
『ほぉぉ、こまかくてむぞかのぉ』
突然鳴り響く掠れたダミ声に、兄弟達はおろかオレまで緊張で身体を震わせてしまった。
思いっきり訛ってんじゃねぇぇ!
祖父とは聞いてはいたが、見ると本当に棺桶に片足突っ込んでそうなしわくちゃだ。
末期の酒なのか、ワンカップ片手に笑みを浮かべる翁は、まるで冥府の渡し守カロンを彷彿とさせていた。