高のち飛車、ときどき猫
怯える兄弟達を尻目に、カロンは更に調子にのってきた。
『酒が好きそうな顔じゃのう。ほれ呑むかぁ?』
酒呑童子も裸足で逃げ出しかねない程の、身体中に幾星霜こびりついた酒気を漂わせながら、手に持ったワンカップをオレ達に近付けてくるカロン。
息が詰まる。
「恐いよぉ!」
「いやぁぁぁ!」
兄弟達はカロンの包囲網に、既に阿鼻叫喚だ。
オレだからこそ冷静に事態を把握してはいるが、これはちとマズイ。
絶体絶命の大ピンチに追い込まれたって訳だ。
そんなオレ達を狡猾な看守のように、老害なカロンは更に囃し立てるのだ。
『おぉ喜んどる喜んどる』
黙れ呆け。勘違いも甚だしい。
焦熱地獄の次は叫喚地獄が待ち受けていたとは……。
「きゃあぁあぁぁぁ!!」
「うわぁぁん! ママぁっ!!」
オレ達の悪夢は終わらない。