高のち飛車、ときどき猫

不意に空から覗き込んできた二つの顔に、オレも釣られて顔を上げてみる。


目が合ってしまったので即座に逸らす。見られるのは好きじゃない。


だがその二つの顔は、あいつではなかった事は確かだ。


『ねえシンちゃん、やっぱり子猫だよ』


『やっぱりか……しかも可愛がってくださいって箱に書いてある。こんな所に捨てるなんて酷いな……』


声帯からどうやら、人間の雌と雄みたいだ。


兄弟達は見知らぬ者への怯えからか、声にならずただ震えている。


情けない奴等だ。
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