【あなたと私で創るものがたり】
雪菜の家からほど近い場所──小さなマンションの一室で女性が1人、ニヒルな笑みを浮かべていた。
名を六藤 飛鳥(むとう あすか)という。
21歳の彼女は現在、かなり年上の彼氏と同棲中である。
肩までの茶色い髪に、両耳にある小さなハートのピアスが可愛く光っていた。
仕事に行く彼氏を見送ったあと、テレビに映っている英国紳士にニヤニヤしていた。彼女は部類のオッサン好きで知られている。
実は雪菜とは仲の良い友人関係で、好みでは過大に熱弁を振るい合う。紳士的なオッサンを好む飛鳥とは逆に、彼女は野性味溢れる筋肉質な男性が好みである。
特に褌姿には目が無く、紅白だったらもうハイテンションになる。
当然だが、趣味の範囲であって自分の夫に無理矢理着けさせる気はない。
「趣味は趣味のままが美しいのよ」
そんな持論をかたくなに唱えている。
まあそれはそうと、飛鳥は晩酌のちくわを買うため出かける準備を始めた。