【あなたと私で創るものがたり】
所変わって飛鳥の住むマンションの近くにある小さな公園で、青年がベンチに座って溜息を連続で吐き出していた。
木瀬 健二(きせ けんじ)は先日、バイトをクビになった。
元来の正義感のせいで、客をぶん殴ってしまったのだ──それまでの経緯は、語るも涙の話である。
コンビニのレジをしていた彼は、隣のレジの客が女性店員にやたらとクレーム付けている事に苛立っていた。
夜勤で眠いせいもあったかもしれないが、チノパンを履いて鼻ピアスをした、いかにもチャラいその男は相手が女性だからと威勢を張っているようにしか見えず、挙げ句に女性店員の胸ぐらを掴んだ。
健二は、それにキレて素早く駆け寄ると顎に拳をヒットさせた。
見事なパンチを下顎に食らった客は、脳が揺らされて床に倒れ込み店長にこっぴどく怒られて解雇──という流れだ。
同僚の女性は必死に店長に客が悪いと言ってくれたが、やはり殴ったのは良くない。相手もばつが悪いのか、刑事事件にまではならなかった。
とりあえず買おうとしていたかき氷を無料で差し上げて、店側は事なきを得たのだ。
結局、損をしたのは健二だけかもしれない。
「はぁ~……」
長く息を吐き出し、がっくりとうなだれた。