【あなたと私で創るものがたり】

 さらに別の場所──彼女は帰路についていた。

 たったいま、彼氏をフってきた所である。途中の駄菓子屋で麩菓子と花火を買い、アパートに向かう。

 兎崎 麻衣(とざき まい)は、彼氏の言動に腹が立ったのだ。

 数々の事に注意はしてきたものの、いっこうに治そうともしない。

 挙げ句にコンビニの店員にいちゃもんつけて殴られたとか。

 呆れるにも程がある。

 今朝、彼氏に会うとあごに怪我をしていたため問い質したら案の定だ。もはや溜息しか出てこない。

 自分は強いと思いこんでいる事に呆れるが、横柄な態度が麻衣をさらに苛つかせていた。

 初めは普通だったのに、いつの間にかそんな男になっていたのだ。

 否、違う──麻衣に気に入られようと、そんな態度を取っていたのかもしれない。

 もちろん、それが良い人というワケではなくて、ただ単に麻衣の好きそうな人間を演じていただけだろう。

 男はそれを演じ続けられなくなり、少しずつ本当の性格が最近になって表れてきていたのである。

 聞いたこっちの顔が赤くなった。まさかここまでのバカだとは思ってもいなかった。

 ほとほと呆れて、つい先ほど平手をお見舞いして別れてきたのである。

「あースッキリした」

 緩くカールした背中までの髪を流して発し、部屋の錠を回した。



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