【あなたと私で創るものがたり】
またまた所変わって──
「うう、くそ」
少年は涙を浮かべながらトボトボトと、昼下がりの住宅街を歩いていた。
今日は振り替え休日のため中学校は休みなのだが、歩いていると道で遊んでいた小学生に絡まれて逃げてきた所である。
別に見た目がどうとか、態度がどうとかではなく、この少年の特性とも言うべきか。とにかく彼は周囲にいじられ──もとい、可愛がられてしまう性質なのである。
少年の名は根岸 光男(ねぎし みつお)、15歳。焦げ茶色の短髪に大きな瞳が可愛らしい。
クラスでもみんなのアイドル的存在である彼は、感極まると泣いてしまう質なのだ。それが返って周囲にいじられてしまう結果になるのだが、こればかりはそう簡単に変える事は出来ない。
戦艦があればみんな僕をいじめないのに──などと、およそ現実味にかける想像をしながら駅に向かう。
「!」
そんなとき、ふと目に留まった公園にある1本の木。
今まで気がつかなかったけど──
「蜂の巣!?」
そこには、大きな楕円形の蜂の巣が枝と枝の間にぴたりとくっついていた。
この道は住民もあまり通らない抜け道のようなもので、目の前の公園は遊具は少なく狭い敷地であるため子供はほとんど来る事がない。
そのせいで被害も無かった訳だが、蜂に巣を作らせる結果にもなった。