【あなたと私で創るものがたり】
 海の幸と山の幸とを二人で堪能しようと思っていたのに。

 そりゃあ初任給の額なんか、たかが知れてる。

 それでも、彼女の笑顔が見られるならと思っていた。

 別れたあと一度、街で彼女の姿を見た。

 目を合わせるのが怖くて電柱の影に隠れてしまった。

 彼女はもう、次の彼氏を作っていた──胸が締め付けられた、叫びたかった。

 けど仕方ない、僕は彼女に嫌われてしまったんだから。

 何もかもがなんだかどうでもよくなっていた。
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