【あなたと私で創るものがたり】
それから、そいつは姿をくらまし、いくら探しても見つからず途方に暮れていた。どうして自分を突き飛ばしたのか、どうして笑っていたのか──訊きたい事はいくらでもある。
金と時間を費やし、五年を経過してようやく見つけたのは、都心よりもさらに北の田舎町だった。
「!? 斉藤!? どうしてここに……」
驚愕の眼差しで見つめてくる視線に反吐が出そうになったが、なんとかこらえて声を絞り出す。
「ど……して俺を、突き飛ば……た」
いやに聞き取りづらい低く、くぐもった問いかけに男は視線を外した。口の中で舌打ちした音を聞き逃さない。