【あなたと私で創るものがたり】
 
 女はこいつに、俺のあること無いこと悪口を吹き込み、好意を寄せていたせいもあってすっかり信じ込んだのだ。

 どうして俺に聞いてくれなかった? そうすれば誤解は解けたのに。こいつが俺を突き飛ばしたあと、女もいなくなっていた。

 こいつは女を捜したようだが、見つからなかったらしい。

 俺は、初めから捜さなかった。あんな女を捜したところで、耳にするのはどうせ言い訳ばかりだからだ。

 しかし、許せないのはこいつだ。

 親友だと思っていたのに、にわかの女の言葉で俺を悪者に仕立て上げた。

 突き飛ばしたことさえ、後悔の念もまるでなく「自分の胸に訊け」と言わんばかりに睨み付けてきた。

 俺を突き飛ばした事に、後悔の念は無いだろう。しかし、一人の人間を殺そうとした後悔くらいは、こいつから感じたかった。

「ふ、ククク……」

 自然と笑いが突いて出る。
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