【あなたと私で創るものがたり】
「織り成すあやかし」




 空はいつでもどこかでは青く、暗く、涙を流す。

 そこに人の感情が介入する余地など、当然として存在しない。

 宇宙を飛び交う素粒子に比べれば、生物の感情など微々たるものだからだ。

 しかし、地表を這い回る人間同士なら、時として強い感情は何かを発動させる。




 私には妻と七歳になる息子がいる。

 ──否、いた。と言えばいいのか。

 あいつは、ある日突然に私から全てを奪っていった。

 私は裁縫屋を営んでいた。

 おかしな言い方かもしれないが、衣服だけでなく布や革などで小物を作っていたため、自らの店を仕立て屋ではなく裁縫屋としていた。
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