【あなたと私で創るものがたり】
 こんなことはあり得なかった。

 小さな幸福を噛みしめて、ただ普通に生きていた私たちが、どうしてこんな仕打ちを受けなければならない。

 何の罪もない妻と子が何故、殺されなければならない?

 私が少し買い物に出掛けた合間に強盗が忍び込み、昼寝をしていた二人を刺し殺した。

 叫ばれる事を恐れたのか、抵抗されるのを恐れたのか、妻への刺し傷は数十カ所にも及んでいた。

 それだけでも許せないというのに、息子は内臓が破裂していると言うではないか。

 勢いよく蹴り飛ばしたあと、ぐったりしている息子の首を切ったというのだ。

 なんと許し難い所業だ。私の怒りは裁判中の男の背中に向けられた。

 それに相応しい判決が下されるのだと思っていた。
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