【あなたと私で創るものがたり】
 懲役十五年は妥当だったのだろう。

 しかし、その男は模範囚として十年そこそこで出所した。

 それを知ったときの私は、まさに鬼の形相だったに違いない。

 どれだけの怒りが私の全身を駆けめぐっただろうか。

 四十歳を間近に私は、いつかあいつを殺してやるのだと、ただそれだけを心に生きていた。

 そんなことが叶うはずもなく、憎しみだけが私をこの世につなぎ止めていた。

 ──そんなある日、私はテレビのニュースに思わず目を見開いた。

 踏切から線路に侵入し電車に轢かれて死亡したその名前は、決して忘れてはならない男のものだった。

 紛れもなく憎いあの男だ。
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