【あなたと私で創るものがたり】

 ──誰か、私を止めてくれ。

 でなければ、私は夜を歩く死に神となるかもしれない。

 気がつけば私は、全てを妬ましく感じていた。

 私はこんなにも不幸なのに、幸せそうに笑う人々が憎たらしく、死んでしまえばいいのにと思うようになっていたのだ。

 かつては「幸せであれ」と込めた願いは、同じ手で「不幸になれ」と織り込んでゆく。

 見えない意思が招いた結果に誰をもそれを裁く力などなく、私の呪いは達成されてゆくだろう。

 私は全てを憎み、妬み、化け物と成るのだ。

 あれほどに我が幸福を奪った輩を憎しみ抜いた私が、今度は誰かの幸福を奪うことになるとは、なんとも皮肉な話ではないか。
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