隣に座っていいですか?
身動きとれない
家に帰っても
寝付かれず寝不足の私とは対照的に
「いくちゃんおはよう」
朝から元気にあいさつし
ご飯を食べて幼稚園に向かう桜ちゃん。
「行ってきまーす」
お友達の姿を見つけ
黄色いカバンを揺らしながらまっしぐら。
若いわー。
あたりまえか。
「早く孫が欲しいなー」
母親にボソリと言われてビクッとなる。
「孫って……」
「桜ちゃん可愛いかったなー」
はいはい
よかったですね。
家族で桜ちゃんを見送ってると
「郁美の子供の頃に似てる」
お父さんが言う。
私?
「そうそう。寝顔なんてそっくり」
「懐かしかったな」
夫婦の会話を聞きながら
不思議な気分。
「うぉっす!」
隣からスーツ姿の達也が現れた。
「あら達ちゃん出勤?」
「そうそう。おばちゃんへそくりない?預金待ってるよ!」
そんな会話をしながら
私の前で足を止める。
「返事は?」
「オリンピックまで待つって言ったじゃん」
「やっぱり待てない」
「うそつき」
ムッとする私の頭を叩き
達也はご出勤。
「そーゆー仲なの?」
「違う」
母と娘の会話を
さりげなく聞く父であった。