隣に座っていいですか?
初夏の風が夏の風に変わる。
桜ちゃんも夏休み
ノースリーブのワンピースで近所を元気に走ってます。
子供はいいなぁ
二の腕を気にしなくていいから。
太陽が輝き
ざるそばが出る季節。
うちの天ざるは美味しいよ。
揚げ物がカラッと揚がって、汁もかつおが効いていて自信作。
あぁ
こんな事を語る私は
いつ、まともな会社のまともな事務員になれるのだろうか。
「もうここでいいじゃん」
土曜の午後
その天ざるを食べながら達也が言う。
「嫌!」
強く言い切る私に
「お母さんまだ手が痛いー」
甘えた声が聞こえる。
包帯はしてるけど
もう治ってるはずだぞ!
私の回りは身体弱いのが多いな。
「ねぇ、田辺さんとこさぁ……あれ達也」
恵子おばさんが店に入る。
「あんたここにいるなら、店番してよ」
「また食べ終わってないー」
親子の会話をしてから
うちのお母さんの姿を捕え、恵子おばさんは話し出す。
「今日、何かあったの?」
「何かって?」
「高そうな車が次から次へと、うちの町内会に入ってきてさ、田辺さんの家に入ってったから」
田辺さん?
その名前を聞いて手が止まる私と、私を見つめる達也の視線。