隣に座っていいですか?
「田辺さんの姿を見たけど、あの自由業の人が黒っぽいスーツ着てたから」

スーツ?

「あ……」
思わず声が出た私にみんなが注目。

「何でもないです」
訂正して逃げようと思ったけど、逃げれない雰囲気。

いや
違うかもしれないけど
私は頭の中の想像を披露。

「桜ちゃんのお誕生日が近い話を本人から聞いていて、確か桜ちゃんが3歳の誕生日近くに奥さんが亡くなってるから、三回忌かな」

「桜ちゃん誕生日か?」
いや
そこじゃなくて……お父さんっ!
奥さんの話だよっ!

法事だったのかな。

だから
奥さんの家族とか田辺さんの家族が集まってるのだろうか。

おじいちゃんとおばあちゃんはいるけど、桜ちゃんには優しいけど田辺さんには優しくないから好きじゃないって、桜ちゃん言ってたっけ。

今日は
どうだったんだろう。

不安げな顔になってたのだろうか、達也がお茶を取りに行きがてら、私だけに聞こえるような小さな声で耳元で言う。

「余計な事考えるなよ」

「余計な事って何よ」

「別に」

別に……って。

何よ。




< 103 / 307 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop