隣に座っていいですか?

夏はビール。

田辺家の庭で昼から酒盛り。
いいのか?

「いいじゃん」

「冷たくて美味しいですね」

男ふたり
意気投合して飲んでます。

大きな桜の木が影を作り
そよそよと風が流れる。

小さなテーブルを囲み
いつもの二人掛け用の椅子に田辺さんが座り、キャンプ用の椅子に私と達也が並んで座り、私はウーロン茶を飲み2人を観察。

変な感じ。

「奥さんの法事ですか?」
達也が聞くと

「はい」
優しく答える田辺さん。

聞きたいけど聞きたくない
奥さんの話。

「愛妻家のイメージあるな」

「いえ、普通ですよ」
自然に答え
田辺さんは微笑む。

「お客さん沢山来てました?疲れたでしょう」
やっぱり流れを変えたくて、つい口を出してしまう私。

「そうですね。疲れました」

人づきあい苦手そうだもんな。

「ご両親とか来たんですか?桜ちゃんの顔見て喜んでたでしょうね」
悪気なく達也が言うと

「ええ……心配してました」

「心配?」

「男手ひとつで育ててるから、かなり心配されていて……妻の方の両親には『桜を渡せ』って言われてます」

そんな事を?
達也と驚いていると

「向こうの両親には僕は嫌われてますから。最初から結婚は反対されてましたし、勝手に結婚して挙句の果てに娘を病気にさせて、二度と会えなくさせているので」

「それは田辺さんは悪くないし!」

「悲しく泣かれるより、元気で恨まれる方が楽です」

人が良すぎる。
< 106 / 307 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop