隣に座っていいですか?
夏はビール。
田辺家の庭で昼から酒盛り。
いいのか?
「いいじゃん」
「冷たくて美味しいですね」
男ふたり
意気投合して飲んでます。
大きな桜の木が影を作り
そよそよと風が流れる。
小さなテーブルを囲み
いつもの二人掛け用の椅子に田辺さんが座り、キャンプ用の椅子に私と達也が並んで座り、私はウーロン茶を飲み2人を観察。
変な感じ。
「奥さんの法事ですか?」
達也が聞くと
「はい」
優しく答える田辺さん。
聞きたいけど聞きたくない
奥さんの話。
「愛妻家のイメージあるな」
「いえ、普通ですよ」
自然に答え
田辺さんは微笑む。
「お客さん沢山来てました?疲れたでしょう」
やっぱり流れを変えたくて、つい口を出してしまう私。
「そうですね。疲れました」
人づきあい苦手そうだもんな。
「ご両親とか来たんですか?桜ちゃんの顔見て喜んでたでしょうね」
悪気なく達也が言うと
「ええ……心配してました」
「心配?」
「男手ひとつで育ててるから、かなり心配されていて……妻の方の両親には『桜を渡せ』って言われてます」
そんな事を?
達也と驚いていると
「向こうの両親には僕は嫌われてますから。最初から結婚は反対されてましたし、勝手に結婚して挙句の果てに娘を病気にさせて、二度と会えなくさせているので」
「それは田辺さんは悪くないし!」
「悲しく泣かれるより、元気で恨まれる方が楽です」
人が良すぎる。