隣に座っていいですか?
「それを桜が聞いていて『おばあちゃんなんて嫌い。桜はお父さんとずっといるの』って叫んで、僕に怒られてました」
あぁ
だから桜ちゃん
今日はそんな顔してたんだ。
「田辺さん嬉しかったでしょう」
達也が冷やかすと正直にうなずく。
「桜を手放したくない……けど」
けど?
「それが本当に桜の為なのかとか、最近は思ってしまいます」
その言葉に
黙ってしまう私達。
「奥さんの忘れ形見だから、手放したくない?」
今日の達也は
気のせいか
奥さんの話を引き出そうとしている。
「そう……ですね」
男達のビールが進むのは
暑いせいだけなのだろうか。
「まだ奥さんの事を愛してます?」
「達也、ちょっと」
思いがけない質問に私の方が驚いてしまう。
田辺さんは答えない。
答えず
私をジッと見つめる。
引き込まれるような澄んだ目をしていた。
まっすぐ
私を見つめるので
なぜだろう
苦しくなって
泣きたくなってしまう。
最近は
その姿を見つけるたびに
苦しくて
つい逃げ出して隠れていた。
誰かと一緒なら大丈夫
お隣さんだから
ご近所だから
桜ちゃんのお父さんだから
そう言い聞かせて
誰かを含めて話はするけれど
ふたりきりは
避けていたのを
田辺さんは気づいているのだろうか。
あぁ
だから桜ちゃん
今日はそんな顔してたんだ。
「田辺さん嬉しかったでしょう」
達也が冷やかすと正直にうなずく。
「桜を手放したくない……けど」
けど?
「それが本当に桜の為なのかとか、最近は思ってしまいます」
その言葉に
黙ってしまう私達。
「奥さんの忘れ形見だから、手放したくない?」
今日の達也は
気のせいか
奥さんの話を引き出そうとしている。
「そう……ですね」
男達のビールが進むのは
暑いせいだけなのだろうか。
「まだ奥さんの事を愛してます?」
「達也、ちょっと」
思いがけない質問に私の方が驚いてしまう。
田辺さんは答えない。
答えず
私をジッと見つめる。
引き込まれるような澄んだ目をしていた。
まっすぐ
私を見つめるので
なぜだろう
苦しくなって
泣きたくなってしまう。
最近は
その姿を見つけるたびに
苦しくて
つい逃げ出して隠れていた。
誰かと一緒なら大丈夫
お隣さんだから
ご近所だから
桜ちゃんのお父さんだから
そう言い聞かせて
誰かを含めて話はするけれど
ふたりきりは
避けていたのを
田辺さんは気づいているのだろうか。