隣に座っていいですか?
心に線を引きましょう②~田辺side~
妻が亡くなった時
涙ひとつ見せない僕を
妻の両親は強く責め立て
「一生許さない」まで言われ
僕は
妻の遺影を見ながら
一分が一時間とも思える
鈍い時間の経過と闘う。
色んな人が泣き
妻に別れを告げている
僕は会場の人と連絡を取り合い
桜が寂しくないか
不安がってないか
それだけが心配で
常に意識は桜にあった。
寒くはないだろうか
3歳になったばかり
この状況がわかっているのか
わかっていないのか……僕の母親に甘えながら咳をしている。
風邪引いたかな。
やはり
もう一枚上着を着せようか
「桜の白い上着はどこだっけ?」って、ふと自然に妻を探してしまう自分がいた。
妻はいない
もう
家にも病院にもいない
どこにも
いない。