隣に座っていいですか?

長い指が私の肩から移動し
ふわりと髪を撫でる。

ふたりで夜風に当たり
ワインを飲み
身体を寄せ合う。

「達也さんとの結婚はいつですか?」
ふと聞かれ
私は笑って「その話は消えました」と答えた。

すると田辺さんは
「消えましたか」
楽しそうに言い
私を胸に入れたままグラスを取り、またワインを喉に流す。

のどぼとけが上下する。
男の人なんだなぁって
ぼんやりと感じた。

「どうぞ」
私のグラスも取ってくれて
私も続けてワインを飲んだ。

明日
絶対頭痛です。

でもね

今の状態が楽しくて幸せなんだ。

田辺さんの胸の中は
とっても広くて
温かくて優しくて

泣きたいぐらい
幸せを感じてる私。

「郁美さん」

「はい」

「顔上げて下さい」

「どうして?」

「顔が見たい」

「嫌です」

「そこを何とか」

何とかって……
その言葉がおかしくて
顔を上げると

優しいキスが待っていた。

彼のキスは優しい

柔らかな唇が私を迎え
しっかりと抱きしめる。
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