隣に座っていいですか?
「田辺さん?」
イントネーションがおかしかっただろうか
皆が私達に注目し
ニコニコ笑顔の桜ちゃんを挟み
私と田辺さんは向かい合う。

「沢山考えました」
綺麗な顔が強張ってる。

「前に言ったように、僕にはハンデがありすぎます。でも郁美さんが好きです。この気持ちは変わりません」

え?
いや……え?

「お互い色んな想いが沢山あると思います。僕は郁美さんに迷惑をかけるかもしれない。臆病で不器用で気が利かないし」

奥の方で
お母さんと恵子おばさんがうなずく。

「郁美さんも不安がたくさんあると思います。けれど……いや、だから一緒に考えましょう」

田辺さん。

「どんな悩みも不安も、ふたり一緒なら大丈夫。僕は貴女を他の人に渡したくない。大好きな人だから一緒になりたい」

一緒なら大丈夫。

「貴女を不安にさせない」

強く言われて
もう一生分泣いたと思っていた涙が
また溢れてきた。

「いくちゃん」
可愛らしい声が私のエプロンを引っ張った。

「さくらのママになってください」

「桜ちゃん」

「さくらはお母さんがいるから。お母さんじゃなくて、さくらのママになってください。いくちゃんママです」

元気な声で

そう言われた。

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