隣に座っていいですか?
先程の彼のご両親もそうだったけど
上質のスーツを着こなし
品のあるお顔をしていた。

まずは
ツカツカとお二人は
彼の目の前に立ち、何かを言う直前で私に目をやり……表情が一転する。

特にご婦人は
見る見るうちに
目に涙を浮かべて
私の顔を遠慮せず角度を変えて見て、声を詰まらせた。

「弥生……」
震える声を出し
こちらに崩れそうになった所を、隣の紳士がスッと自然に受け止めていた。

弥生さん

亡くなった奥さんのお名前。

「……似てる」
低い声が紳士から聞こえた。

亡くなった奥さんと似てる?

いやいやいや
めっそうもない!
あんな綺麗な人には似てません。

全力で否定しようと思ったら

「横顔が似てる」とご婦人が言い微笑んだ。

とっても
柔らかな
優しい笑顔だった。

「うちでお茶でもいかがですか?」

私のお父さんの声が聞こえた。


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