隣に座っていいですか?
桜ちゃんを交えて
臨時休業をしていた(発表会の為、店は休みらしい……いい加減にしなさい)
そば屋の和室で
私の家族と
彼の亡くなった奥さんのご両親と
彼と私が座り
お茶を飲む。
本当は
ここに彼のご両親も交え
一席設けるつもりだった我が両親。
勝手に企んだな。
桜ちゃんの発表会の話をして
和やかに会話は続く。
いつも険悪な自分の祖父母が、穏やかな表情で私達と話をしているのが嬉しいのか、桜ちゃんは元気に話をしまたヒラメを踊ってくれた。
何度見ても可愛い。
私も親バカだなぁ。
そんな私を見て
そっとご婦人が
「昨日、娘が夢に出てきました」
柔らかい声を出す。
「郁美さんの話をしてました。とても可愛らしい、優しい人だって……応援してねって……言ってました」
思い出すように噛みしめて言う。
「本当は反対でした。いくら桜の為とはいえ、再婚は早く感じて、私と主人は……紀之さんを恨んでいたので」
彼の言う通りだ。
「娘は病気だったのです。紀之さんは何も悪くないけれど……娘を亡くした私達は怒りをぶつける場所がないと気が変になりそうでした」
悲しみより怒り
その方が楽と彼は言ってたっけ
「昨日の夢といい……郁美さんが娘に似ている件といい。桜の喜ぶ顔といい……もう私達には何も言う権利はありません、ただ……」
「はい」
「桜は弥生の忘れ形見です。これからも会わせて下さいね」
「もちろんです。いつでも遊びに来て下さい」
「貴女の顔も見に行っていいですか?」
「いつでもお待ちしてます」
元気に言って頭を下げた。